欧州指令に従ってCEマークを正しく表示していたとしても、安心はできません。実際の市場監視や当局の検査では、CEマークそのものだけでなく、製造銘板(ネームプレート)の表示内容についても指摘を受けるケースが少なくありません。
本記事では、製造銘板とCEマークの基礎知識から、具体的な表示要件、そして実務上の留意点まで詳しく解説します。
製造銘板とは何か?
製造銘板(nameplate)は、製品に恒久的に取り付けられる識別ラベルです。一般的には金属板や樹脂プレートに刻印または印字され、製品の「身分証明書」のような役割を果たします。
欧州機械指令(2006/42/EC)では、CEマークの表示と同様に、この製造銘板に明確な規定が設けられています。製造銘板が不十分であれば、CEマークを正しく付けていても「不適合」と判断されることがあります。
製造銘板に必要な項目(機械指令 2006/42/EC Annex I, 1.7.3)
製造者は、以下の情報を製造銘板に恒久的に表示しなければなりません。
- 製造者名と完全な住所(郵便番号・国名を含む)
- 機械の一般的な名称(用途を示す)
- CEマーク(Annex III に基づく)
- シリーズ名またはタイプ名
- シリアル番号(固有の識別番号)
- 製造年(製造が完了した年)
これらは単なる形式ではなく、製品が追跡可能であることを保証し、事故や不具合が発生した際に責任主体を明確にするために不可欠です。
CEマークとは?
CEマークは「欧州経済領域(EEA)で販売される製品が、関連するEU法規に適合していることを示す表示」です。1985年から導入され、今日では消費者や当局にとって「安全・適合の証」として広く認知されています。
ただし、誤解してはいけないのは、CEマークは認証機関から付与される「合格証」ではないという点です。最終的な責任はあくまで「製造者」が負います。認証機関(ノーティファイドボディ)の関与がある場合でも、適合宣言とマーク表示の責任は製造者自身にあります。
CEマークの表示要件
- サイズ:文字の高さは最低5mm
- 場所:製品または製造銘板に明瞭・恒久的に表示
- 視認性:見やすく、消えにくく、容易に判別できること
- 例外:製品の性質上、直接表示が困難な場合は、梱包や添付文書への表示が認められています
この「恒久的に、見やすく」という要件が満たされないと、せっかくのCEマーキングも不適合とされるリスクがあります。
CEマーキングのステップ(実務フロー)
CEマークを正しく表示するためには、以下のステップを経る必要があります。
- 該当するEU指令・規則を特定する
- 製品の固有要件を確認する
- ノーティファイドボディ(認証機関)の関与要否を判断する
- 製品試験や検証を行い適合性を確認する
- 技術文書(Technical File)を作成・保管する
- 製品にCEマークを表示する
この流れを飛ばして「とりあえずマークを付ける」ことは重大な違反となり、リコールや罰則の対象になる可能性があります。
よくある指摘事例
- 製造者住所が不完全(国名や郵便番号が省略されている)
- 製造年の記載がない、あるいは製造番号と混同されている
- CEマークが小さすぎる(5mm未満)
- 印字が簡単に消えるラベルに表示している
- 複数の指令に該当しているのに、適合性評価を一部しか行っていない
これらは市場監視で頻繁に問題となる点であり、輸出ビジネスを行う製造者にとって注意が必要です。
まとめ
CEマークを正しく表示することはもちろん重要ですが、製造銘板の不備が原因で「不適合」と判断されるケースが少なくありません。
輸出や欧州市場での販売を目指す製造者は、CEマークと製造銘板の両方に注意を払い、EU法規を遵守する必要があります。
「マークを付けたら終わり」ではなく、適合性評価・技術文書・恒久的表示といった一連の要件を満たしてこそ、真に安全で信頼される製品として市場に送り出すことができます。
✍️ MSDコンサルティング
コメント