1.6.5 の条文内容(要点)
規制文書 Regulation (EU) 2023/1230 の1.6.5項には、以下のような義務が記載されています。
1.6.5 内部部品の清掃(Cleaning of internal parts)
機械類は、危険物質または薬剤を含む内部部品の清掃が、内部に入らないでできるように設計・製造しなければならない。また、外部から閉塞を解除できるように設計・製造しなければならない。機械類の内部へ入ることを回避できない場合には、清掃を安全にできるように設計・製造しなければならない。
和訳引用:資料作成国際安全衛生センター
- “The machinery or related product shall be designed and constructed in such a way that it is possible to clean internal parts, which have contained dangerous substances or mixtures, without entering them.”
→ 危険物質・混合物を含んだ内部部品があっても、使用者がその内部に入らずに清掃できるように設計・構造としなければならない。 - “Any necessary unblocking shall also be possible from the outside.”
→ 万が一、詰まり等の“閉塞(unblocking)”が起きた場合、それを外部から解除できるような設計であること。 - “If it is impossible to avoid entering the machinery or related product, it shall be designed and constructed in such a way as to allow cleaning to take place safely.”
→ 内部に入ることを避けられない場合には、入り込んでの清掃作業が安全にできる設計と構造でなければならない。
補足:対象となる「危険物質・混合物」や「安全に」の意味
- 危険物質または混合物(dangerous substances or mixtures)
これは例えば、腐食性液体、毒性化学物質、可燃性液体、有害粉塵などが含まれます。使用する機械の用途によって、どのような物質が内部部品に含まれうるかを設計段階で明らかにすることが重要です。 - 内部に入らずに清掃できることの意義
清掃対象内部部品にアクセスできるような取り外し可能なパネル、観察窓、ノズルやフィラーポートなどが設けられている、あるいは自動洗浄機能や洗浄用開口部が外部からアクセス可能であるといった設計が考えられます。 - 安全に清掃できる設計とは
- 入る必要がある場合のアクセスの安全性(足場がある、落下防止、閉鎖空間の換気等)
- 保護具の使用が可能であること(手袋、面罩等)
- 内部での機械部品の動作停止/ロックアウトができる構造
- 清掃作業中に危険な成分の拡散を防ぐための結構的・機能的な設計(シール、通気経路、ドレンなど)
実務上の設計・製造者へのアドバイス
設計者、製造者、機械ユーザーがこの義務を満たすために取り組むべきことを以下に整理します。
項目 | 注意点・具体策 |
---|---|
リスクアセスメント | 内部に含まれる可能性のある危険物質・混合物の種類と性質を特定する。使用環境での汚れ・詰まりの発生頻度を想定する。 |
アクセス性の設計 | 内部部品を取り外しやすくするパネル・扉・アクセス開口部の設置。清掃ツール/アクセス空間の確保。 |
閉塞対策 | 詰まり(閉塞)の原因の想定、詰まりが外部から解除できる経路の設計。必要なら自動または半自動のクリア通路やバイパスを設ける。 |
安全性の確保 | 機械を停止・電源を遮断できるロックアウト装置・インターロック・遮蔽が可能な構造。清掃時の保護具を使用できる設計。 |
手入れ・清掃性 | 清掃作業の頻度を考慮して、清掃がしやすい表面/形状(角が少ない、凹凸の少ない、材質の耐洗浄性等)。汚れや残留物が残りにくい構造。 |
取扱説明書・表示 | 清掃方法、安全手順、必要な保護具、清掃における危険性などを取り扱い説明書に記載する。アクセス箇所の注意表示等。 |
まとめ
- 1.6.5「内部部品の清掃 (Cleaning of internal parts)」は、EU の Machinery Regulation 2023/1230 に実際に存在する条項であり、内容は元記事の説明とほぼ一致しています。主な義務は、内部部品の清掃を「入り込まずに」できること、詰まりの解消を外部から可能とすること、そしてどうしても入り込む必要があるなら安全にできる設計であることです。
- 「薬剤」という語は訳として使えるが、原文は “dangerous substances or mixtures”(有害物質または混合物)なので、その表現のほうが正確です。
- 設計実務者は、上記条文を元に、自社機械がこれらの要件を満たせているかを評価・改善することが重要です。
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