HAZOPとは何か?
HAZOP(Hazard and Operability Study、ハゾップ)は、工場やプラントで「想定外の危険」や「操作上の問題」を見つけるための手法です。簡単にいえば、「もしこうなったらどうなる?」をみんなで考える安全のための手法です。
もともとは1970年代に化学プラントで使われ始め、今では国際的な標準的手法として広く使われています。
工場や設備は「設計通りに動く」ことを前提に作られますが、現実には思い通りにいかないことがあります。その「ズレ(逸脱)」を見つけ、事故を防ぐのがHAZOPの目的です。
HAZOPの基本的な進め方
HAZOPは、次のようなステップで進めます。
- 対象を決める(例:ポンプ、タンク、配管)
- 意図を確認する(例:「液体を一定量送る」)
- ガイドワードを当てはめる
- 多い(流量が多い)
- 少ない(圧力が低い)
- 無い(供給が止まる)
- 逆(流れが逆になる)
- 逸脱を見つける(例:「逆流したらどうなる?」)
- 原因・結果・対策を考える
- 原因:逆止弁の故障
- 結果:液が逆流して汚染
- 対策:逆止弁の点検、監視装置
どうやって危険を見つけるの?
HAZOPでは、「設計や操作が意図どおりに行われなかったら?」という視点から考えます。
そのときに役立つのが ガイドワード(考えるヒントとなる言葉) です。
代表的なガイドワード
- No(ない):まったく動かない → 例:水が流れない
- More(多すぎる):→ 例:水が出すぎる
- Less(少なすぎる):→ 例:水がちょろちょろしか出ない
- Reverse(逆になる):→ 例:水が逆流する
- As Well As(余計なものも一緒に) → 例:水に泥が混じる
- Sooner Than / Later Than(早すぎる・遅すぎる) → 例:お湯が早く沸きすぎる/なかなか沸かない
身近な例で理解するHAZOP
例1:電気ポットの場合
- 意図:水を安全に沸かす
- 逸脱①:水が無い状態で加熱
- 原因:水を入れ忘れ
- 結果:空焚き → 発火の危険
- 対策:空焚き防止センサー
- 逸脱②:沸騰後も加熱が止まらない
- 原因:温度センサーの故障
- 結果:吹きこぼれ → 火傷の危険
- 対策:二重の安全装置
👉 HAZOPは工場だけでなく、身近な製品の安全にもつながる考え方です。
例2:工場のポンプライン
- 意図:タンクから反応槽へ液を送る
- 逸脱①:流れが無い
- 原因:ポンプ停止、バルブ閉
- 結果:反応が進まず製品不良
- 対策:流量センサー+警報
- 逸脱②:逆流する
- 原因:逆止弁が壊れる
- 結果:液が逆流 → 汚染や爆発の危険
- 対策:逆止弁の点検、逆流検知
HAZOPのメリットと注意点
メリット
- 事故やトラブルを未然に防げる
- チームで議論するため、多角的な視点が得られる
- 法令・規格への対応にもつながる(例:IEC 61882、ISO 31010)
注意点
- 「形式だけ」で終わると本当の危険を見落とす
- 改善案を出しても実行しなければ意味がない
- 誰が・いつまでに対応するかを明確にする必要がある
HAZOPが使われる場面
- 新しい設備を設計するとき
- 工場やプラントを改造するとき
- 法律や規格で定められた定期的な見直しのとき
まとめ
HAZOPは、難しい専門家だけの活動ではなく、「もしこうなったら?」と考えるシンプルな方法です。
工場の安全管理はもちろん、家庭の製品や日常の安全にも応用できます。
📌 ポイント
- ガイドワードを使って「逸脱」を考える
- 原因・結果・対策を整理して記録する
- 改善は実行までつなげる
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