はじめに:なぜ警告ラベルが重要なのか
機械の安全設計において「警告ラベル(Safety Labels)」は、しばしば軽視されがちですが、実はリスク低減の最後の砦として非常に重要な役割を果たします。
機械指令や労働安全衛生法の考え方では、リスク低減の優先順位は以下のように整理されます:
- 本質的安全設計(危険源を除去)
- ガードや保護装置の導入
- 警告・情報提供(警告ラベル・取扱説明書)
つまり、警告ラベルは「最後の砦」として、作業者が危険に直面する前にリスクを認知し、適切に回避するためのものです。
👉 適切に設計されたラベルは、事故を未然に防ぐだけでなく、訴訟やPL(製造物責任)リスクの低減にもつながります。
警告ラベル設計の基本手順
警告ラベルは単なる「注意書き」ではなく、国際規格に基づく体系的なデザインが求められます。
参考とすべき規格は以下の2つです:
- 米国 ANSI Z535 シリーズ(特に Z535.4: Product Safety Signs and Labels)
- 国際規格 ISO 3864 シリーズ(安全色および安全標識のデザイン原則)
これらの規格は、色・形・記号の統一的ルールを提供し、国際的に理解されやすい警告ラベルを設計するための指針となります。
警告ラベルの3つの基本要素
警告ラベルは通常、次の3要素で構成されます。
1. シグナルワード(Signal Word)
シグナルワードは、安全警告シンボル(正三角形内の感嘆符)とそれに続くシグナルワードを含む機械警告ラベルの領域です。シグナルワードは、警告ラベルに注意を喚起し、危険分類を指定するワードです。この分類は、危険が回避されない場合に負傷する可能性と、結果として生じる負傷の重症度に基づいています。
規格の規定であは、危険分類は、「危険」、「警告」、「注意」という3つの言葉で示されます。また、シグナルワードに指定された安全色の技術的定義、色標準、および色公差の規格で規定されています。
- 危険度を示す言葉と安全警告シンボル(⚠️ 感嘆符入り三角形)を含む領域
- 危険度分類は以下の3段階
- 危険(DANGER):切迫した重大危険(赤/白)
- 警告(WARNING):潜在的な重大危険(橙/黒)
- 注意(CAUTION):軽度または中程度の危険(黄/黒)
- ANSI/ISO規格では色相・彩度・輝度の範囲が明確に定義されています。
👉 経営者・管理者にとってのポイントは、色とワードの使い分けが法的根拠を持つことです。
2. メッセージ(Message Panel)
メッセージは、安全標識の領域であり、通常は危険を識別し、それを回避する方法を示し、回避しないことの結果をアドバイスする文章が含まれています。メッセージの内容が示される順序は規定がありませんが、順序を決定する際に考慮すべき要素には、対象者の危険に関する事前知識の程度と、危険を回避するために必要な反応時間が含まれます。
単語メッセージを作成するときは、文の構造からフォントの仕様まで、簡潔で簡単に理解できるように、多くの事柄を考慮しなければなりません。
- 危険の種類、回避行動、未回避時の結果を説明
- 作業者が「すぐに理解できる」文章構造が重要
推奨される記述ルール:
- 見出しをつける
- 能動態を使う(例:「必ず停止ボタンを押してください」)
- 簡潔かつ大文字で表示
- ゴシック系フォントを使用
- 左揃えのレイアウト
- 適切な文字サイズ(視認距離に応じて調整)
👉 例:「⚠️ WARNING: 切断。回転刃に触れると指に重大なけがを負う危険があります。保護カバーを閉めてから運転してください。」
3. 図記号(Pictogram)
図記号は、言葉を使わずにメッセージを伝えることを目的としたグラフィック表現です。これは、危険、危険な状況、危険を回避するための予防措置、危険を回避しなかった結果、またはこれらのメッセージの組み合わせを表す場合があります。
図記号は容易に理解でき、メッセージを効果的に伝える必要があります。安全記号の設計、評価、および使用を支援するために、規格の規定を使用する必要があります。この規格の目的は、情報伝達のための統一された効果的な図記号の採用が必要です。
規格には、図記号のグラフィックデザインに関するいくつかの原則とガイドラインが含まれており、さまざまな危険との相互作用を含む、さまざまな位置と方向での人体と特定の身体部分の多数の例が示されています。
- 言語を使わずに危険を表現するグラフィック
- 危険行為・禁止事項・推奨行動などを一目で示す
ISO 7010(安全標識の国際規格)には、数百種類の標準ピクトグラムが定義されています。
例:
- 禁止(赤い斜線入り円)
- 注意(黄色三角形)
- 義務(青丸)
👉 図記号の利点は「多国籍労働者への配慮」。文章を読めない人でも危険を認識可能です。
警告ラベルの配置とサイズ
設計そのものに加えて、ラベルの貼り付け場所と大きさも安全性に直結します。
- 視認性:危険が発生する前に必ず見える位置に設置
- 距離とサイズ:作業距離に応じた最小文字サイズを確保
- 耐久性:摩耗や紫外線、油、洗浄剤に耐えられる素材を使用
👉 ISO 3864-2では「ラベルの視認距離と最小文字高さ」の関係が明確に定められています。
適切なラベル設計の効果
適切に設計および使用された場合、安全標識は機械のリスク低減に重要な役割を果たすことができます。米国のANSI Z535シリーズとISO 3862シリーズは、機械の安全標識の形式、色、記号を指定しているため、最適な参考になります。
これらの規格を使用して、統一された視覚的レイアウトと潜在的な危険を認識するための一貫したシステムを開発することは、効果的な機械類の警告ラベルの設計に役立ちま
- 作業者のリスク認識の向上
- 事故発生率の低減
- 国際規格に準拠した製品の信頼性強化
- PL法対応としての訴訟リスク低減
まとめ
警告ラベルは単なる「注意書き」ではなく、安全設計の一部として体系的に設計すべき要素です。
- ANSI Z535・ISO 3864・ISO 7010を参照する
- 「シグナルワード・メッセージ・図記号」の3要素を正しく組み合わせる
- 見やすさ・配置・耐久性を考慮して設計する
👉 適切な警告ラベルは、作業者の命を守るだけでなく、企業にとってのブランド信頼性・法的リスク回避にも直結します。
参考情報
- ANSI Z535.4 – Product Safety Signs and Labels
- ISO 3864-1: Safety Colours and Safety Signs
- ISO 7010: Graphical symbols — Safety colours and safety signs
✍️ 執筆:MSDコンサルティング
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