1. はじめに
「機械から出る音がうるさい」と感じた経験はありませんか?
その騒音は単なる「不快感」だけでなく、作業者の健康被害(難聴・疲労・集中力低下)や、周辺環境への悪影響(近隣苦情・規制違反)につながります。
EUの「機械規則(Machinery Regulation)」では、Essential Health and Safety Requirements (EHSRs) と呼ばれる安全基準が定められており、その中の 1.5.8「騒音(Noise)」 は、機械設計における重要な要件のひとつです。
この条文は次のように書かれています:
1.5.8 騒音(Noise)
機械類は、特に騒音源での騒音低減技術の進歩とその方法の利用可能性を考慮の上、空気内伝播騒音の発生によるリスクを最低レベルに抑えるように、設計・製造されなければならない。
和訳引用:資料作成国際安全衛生センター
つまり「最新の技術を使って、できる限り騒音を減らすこと」が機械指令で規定されているいるのです。
2. 騒音が問題になる理由
- 健康被害:長時間の騒音は、難聴・耳鳴りだけでなく、心血管系疾患やストレスを引き起こすことが知られています。
- 作業効率の低下:騒音があると会話や指示が聞き取りにくくなり、ヒューマンエラーの原因にもなります。
- 社会的影響:建設現場や工場での騒音は、周辺住民からの苦情、企業イメージ低下、法的問題にもつながります。
3. 設計者が取るべき基本ステップ
3.1 騒音リスクアセスメント
まずは「音の発生源」を特定する必要があります。
- 音の発生源(モーター、ファン、ギア、コンプレッサーなど)
- 音の種類(連続音、衝撃音、低周波音など)
- 使用状況(屋内か屋外か、作業者が近接するか)
3.2 騒音低減の手段
- 発生源での低減(モーター設計改善、ファン羽根形状の最適化)
- 伝達経路での低減(遮音壁、吸音材、制振材)
- 受音側での低減(個人用保護具:イヤーマフ、耳栓など)
EHSR 1.5.8 では「発生源での騒音の低減」を最優先とする点が強調されています。
4. 騒音低減の具体的技術
4.1 受動的手法(従来型)
- 制振材・吸音材:板金機械や筐体に貼り付け、共振や響きを抑える
- 遮音材:エンクロージャーで音を閉じ込める
- 吸音パネル:工場壁面に取り付け、音の反射を減らす
4.2 能動的手法(最新技術)
- アクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)
今後、期待される技術であるが、まだ実用化には至っていない。
MSDコンサルティング
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