機械安全|振動(Vibrations)

1.5.9 振動(Vibrations)とは何か

EU の規制文書 Regulation (EU) 2023/1230(Machinery Regulation) において、必須要求事項 EHSR の 1.5.9 は以下のように定められています:

“Machinery or related products shall be designed and constructed in such a way that risks resulting from vibrations produced by the machinery or related product are reduced to the lowest level, taking account of technical progress and the availability of means of reducing vibration, in particular at source. The level of vibration emission may be assessed with reference to comparative emission data for similar machinery or related products.”

この条文の要点は:

  • 機械(または関連製品)は、動作時に発生する振動によるリスクをできる限り低く抑えるよう設計・製造されること。
  • 振動低減技術(技術の進歩)や、振動を低減する手段(means)が利用可能であることを考慮すること。
  • 振動の発生源(at source)での低減を特に重視すること。
  • 振動発生量(vibration emission)のレベルを、類似の機械・製品の比較データを参考に評価できること。

規制・関連法令

  • EU ではこの Machinery Regulation(2023年)に加えて、「労働者の振動曝露(mechanical vibration exposure)」を規制する Directive 2002/44/EC があり、手腕振動や全身振動などに関する健康リスク管理が義務付けられています。
  • ISO 規格(例:ISO 5349-1, ISO 5349-2)などが、手腕振動の測定・評価方法として参照されています。Directive 2002/44/EC はこれらの標準を基にしています。

設計・実務上のポイント

実務でこの要求を満たすためには、以下のような対策・設計上の配慮が必要です:

  1. 振動リスクのアセスメント
    書類・仕様・使用環境を調査し、振動の発生源/量/使用者への影響を見積もる。
  2. 発生源での低減(At Source)
    振動発生部の設計改善、回転速度の最適化、バランス調整や振動吸収材の使用など。
  3. 構造・素材の選定
    機械の構造体や支持構造を剛性高く設計する、振動を伝えにくい素材や部品を用いる。
  4. 試験・検証
    実際の使用条件下や模擬環境で振動測定を行い、規定のレベル以内かどうかを確認する。比較データを参照する。
  5. 情報提供とユーザ指示
    振動の発生レベル・使用上の注意事項・振動低減法などをマニュアル/取扱説明書で明示する。

まとめ

規格・指令(ISO、Directive 2002/44/EC 等)と組み合わせて設計・試験・取扱説明書の整備が重要です。

EHSR 1.5.9 振動 (Vibrations) は、EU Machinery Regulation に明記されており、機械の設計・製造において振動によるリスクをできるだけ低く抑えることが求められています。

騒音とは別の概念で、振動そのものの発生・伝播・使用者曝露などが対象です。

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