OTセキュリティ資産の洗い出し(ステップ1)

OTセキュリティ資産の洗い出しは、制御システムに含まれるPLCやHMI、制御サーバ、ネットワーク機器などを網羅的に把握し、機能・設置場所・接続先ネットワーク・利用プロトコル・稼働形態・セキュリティ対策状況を整理するプロセスです。同一機能資産のグループ化や非定常機器の除外を行い、情報系・制御系・ネットワーク資産に分類して資産一覧表を作成し、以降の脅威分析やリスク評価の基盤とする重要なステップです。


1. 資産の対象範囲

資産には、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、情報、サービス、人材 など多岐にわたる要素が含まれます。

具体的には次のような分類で整理します:

ハードウェア資産

  • 制御装置(PLC、DCS、RTU など)
  • 監視端末(HMI、エンジニアリングワークステーション)
  • サーバ(アプリケーションサーバ、データベースサーバ)
  • ネットワーク機器(ルータ、スイッチ、ファイアウォール)
  • センサー、アクチュエータなどの現場機器

ソフトウェア資産

  • 制御用アプリケーション
  • 運用・監視ソフトウェア(SCADA、MES)
  • OS、ファームウェア
  • セキュリティソフト(ウイルス対策、ログ収集)

ネットワーク・通信資産

  • 制御ネットワーク(OTネットワーク)
  • 企業ネットワーク(ITネットワーク)との接続点
  • 無線通信(Wi-Fi、5G、専用回線)

情報資産

  • 制御レシピ、運転マニュアル、システム設計書
  • ログや監視データ
  • 顧客情報や生産データ

サービス資産

  • 外部のクラウドサービス
  • メンテナンス委託サービス
  • 事業継続計画(BCP)に関するリソース

人的資産

  • システム管理者
  • オペレーター
  • 保守担当者
  • 外部委託業者

洗い出しの実務手順

  1. システム構成図を活用
    • ネットワーク図や機器構成表から資産を抽出。
  2. 現場ヒアリング
    • 運用担当者、保守担当者から実際に利用している資産を確認。
  3. 既存の台帳やリストの参照
    • IT資産管理台帳や機器管理表を活用。
  4. 忘れがちな資産を補足
    • USBメモリやノートPCなどの一時利用機器
    • 外部接続(リモート保守用VPNなど)

アウトプット(成果物)

  • 資産一覧表(Excelなどで管理)
    • 資産名
    • 型番・バージョン
    • 設置場所
    • 管理者(責任者)
    • 重要度評価のための備考

この資産一覧が、次のステップ「重要度の評価」の基礎データとなります。


✅ まとめると、ステップ1は 「制御システムに関わるあらゆる要素を洗い出し、資産一覧表を作成する作業」 です。ここで漏れがあると、以降のリスク評価が不完全になってしまうため、可能な限り網羅的に行うことがポイントです。

OT資産一覧表の例(制御システムのセキュリティリスク分析ガイド 第2版)

制御システムのセキュリティリスク分析ガイド 第2版 | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
情報処理推進機構(IPA)の「制御システムのセキュリティリスク分析ガイド 第2版」に関する情報です。

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