EU加盟国の製造物責任指令(Product Liability Directive: Directive (EU) 2024/2853)は、2024年12月9日に発効しました。この指令により、EU加盟国は製造物責任に関する共通のルールを国内法に導入することが義務付けられました。
1. PL指令の目的
PL指令の主な目的は、消費者の保護とEU域内の製品流通の円滑化です。
- 消費者保護
- 欠陥のある製品により消費者が人身・財産被害を受けた場合、製造者に責任を追及可能
- 従来の過失責任とは異なり、製造者の過失の証明は不要
- 製品流通の円滑化
- 加盟国ごとに異なる国内法ではなく、共通の規則を導入
- 共通のルールにより、EU内で製造物が自由に流通しやすくなる
2. 製造物責任の特徴
PL指令に基づく製造物責任の主な特徴は以下の通りです。
特徴 | 説明 |
---|---|
無過失責任 | 消費者は製造者の過失を証明する必要がない |
適用範囲 | 消費者が使用するあらゆる製品(機械、電子機器、医療機器など) |
欠陥の定義 | 製品が安全であるべき水準に達していない場合に「欠陥」と判断 |
被害補償 | 人身被害および財産被害(通常は20万円以上の損害が対象) |
例えば、機械に安全柵が設置されていなかったり、非常停止装置が規格に適合していない場合、事故が発生するとPL指令に基づき製造者は損害賠償責任を負う可能性があります。
3. 適用例:日本企業のEU輸出
日本企業がEU向けに産業機械を輸出する場合、PL指令は以下のように関係します。
- CEマーキングと併用
- CEマーキングは安全規格適合の証明
- PL指令は製造物責任(事故発生時の補償)に関する規制
- 事故発生時の責任
- 機械がEN規格に適合していない場合、PL指令に基づき損害賠償の対象
- 過去の事故未発生や注意喚起だけでは免責されない
4. 製造者が注意すべきポイント
- 設計段階で規格適合を確認(EN ISO 13857、EN ISO 14120など)
- 製品の取扱説明書・安全マニュアルを整備
- 製造物責任保険への加入を検討
- 事故防止対策を記録・保存(リスクアセスメント、保守履歴など)
5. PL指令のメリット
- 消費者の信頼向上:安全で欠陥のない製品を供給
- 企業のリスク管理:リスクを事前に把握し対応可能
- EU内での製品流通が容易になる:共通ルールにより市場参入障壁が低下
6. まとめ
- Product Liability Directive: Directive (EU) 2024/2853は、製造者に対する無過失責任を規定するEU法令
- 日本からEUへ製品を輸出する場合、CEマーキングだけでなくPL指令への対応も必須
- 設計・製造・取扱説明書・保険・リスク管理など、包括的な安全管理体制が求められます。
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