CEマーキング

CEマーキング

CEマーキングとは?

「CEマーキング」は、欧州連合(EU)および欧州経済領域(EEA)で流通する製品が「健康・安全・環境保護に関する基準」に適合していることを、製造者または輸入者が宣言するマークです。

  • “CE” はフランス語 “Conformité Européenne”(ヨーロッパ適合)からきていると言われていますが、関連法令上で明確に「この略称から」と定義されているわけではありません。
  • CEマークを付けることで、製造国を問わず、欧州域内で 自由に販売できる(=単一市場で流通可能) ということを示しています(ただし、適合義務のある指令/規制を満たすことが前提です)。元記事にもある通りです。
  • ただし、CEマーク=「欧州品質保証マーク」「安全性の印」と安易に解釈することは危険です。あくまで「適用される指令・規制に適合していることを製造者等が宣言している」ことを示すマークであって、独立の保証印ではありません。

この章では、まずCEマーキングの基本を改めて整理し、続く章でその意味・適用対象・ルール・最近の動向を順に見ていきます。


「CE」の意味と推移

CEの意味

  • 製品にCEマークを付すことで、製造者(または輸入者等)が「この製品は該当するEUの指令・規則に適合しています」と責任をもって宣言したことになります。元記事でも触れられています。
  • “CE” が “Conformité Européenne” の略と説明されていることが多いですが、法律用語として明記された定義ではありません。
  • 初期の「ECマーク」から1990年代初期には現行のデザインが定着し、1993年頃から「CEマーキング」として一般的になったという説明もあります。

なぜ始まったのか?

欧州単一市場の構築を背景に、各国ごとに異なる安全・環境基準を製品流通の障壁としないよう、共通化された製品安全制度としてCEマーキングが導入されました。

現在の位置づけ

  • 製品の出荷国・製造場所にかかわらず、欧州市場において流通する製品に一定の統一基準を設けるものです。元記事でも「製造場所に関係なく」と記載されています。
  • 補足として:欧州自由貿易連合(EFTA)国(例:ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)もこの制度の例外ではなく、EEA内での流通では同様の制度が機能しています。

CEマーキングが必要な国・流通範囲

必要となる地域

元記事では「欧州連合、欧州自由貿易連合(EFTA)、トルコ、および Brexit移行期間の英国内」と記載されていました。これを最新情報と照らして整理します。

  • 欧州連合(EU)および欧州経済領域(EEA:EU+EFTA加盟国)では、CEマーキングの対象となる製品について、CEマークなしでは市場に出せない制度が基本です。
  • トルコも、EUとの関係においてCE相当の適合性宣言制度を導入しています(Turkey: CE相当 “Conformité Européenne / Türk Standardı” の併用など)。
  • 英国(Great Britain:イングランド・ウェールズ・スコットランド)では、UKCAマーキングという独自制度が導入されていますが、CEマーキングの適用も製品によっては継続可能とされています。

注意点・最新動向

  • 英国では Brexit 後、UKCAマークが原則となる予定でしたが、2025年以降も多くの製品でCEマークを合法的に使用可能とする動きがあります。
  • 補足:CEマークがあれば自動的に英国での流通が保証されるわけではなく、製品カテゴリや適用法令により認証路線が異なるため、英国流通を想定するならUKCAも併せて検討が必要です。

CEマーキングのルールと手続き

製造者・輸入者等の責任

  • 製品をEU市場に出す責任者(製造者、EU域外製造者の輸入業者、またはEU内代理人)が、適切な手続きを経てCEマークを貼る義務があります。
  • 製造者は「この製品が適用される指令/規則のすべてを満たしている」と宣言する必要があります。元記事の「自己認証」や「ノーティファイドボディ関与の必要性」も基本的にこの点を説明しています。
  • 輸入業者・販売業者も、製造者が適合手続きを適切に行ったか、技術文書(テクニカル・ファイル)が要求時に提示可能かを確認する義務があります。

マーキングの表示ルール

  • CEマークは製品本体に貼付するのが原則で、製品の材質・設計上どうしても不可能な場合は、包装や添付文書に付けることができます。
  • 最小サイズ(垂直寸法)は通常5 mm以上。
  • CEマークの後ろに、適合性評価に関与したノーティファイドボディ(認証機関)がある場合はその識別番号(4桁)が記載されるのが一般的です。元記事でも触れられています。

手続きの主な流れ

一般的な流れを整理すると以下の通りです(元記事の構成をベースに、最新整理も加えます):

  1. 該当する指令・規則の特定
    製品がCEマーキング義務のある指令/規則(例:機械指令、低電圧指令、EMC指令など)に該当するかどうかをまず確認。
  2. 該当すべき基本要件(必須要件)の特定
    各指令には、製品分類やリスクレベルに応じた「基本的な安全・健康・環境保護要件」が定められています。これらを満たす必要があります。
  3. 適合性評価ルートの選定
    製品のリスク・カテゴリにより、自己宣言(内部生産管理=モジュールA等)でよいか、第三者認証(ノーティファイドボディ関与)を要するかが変わります。元記事にあるモジュール分類(A~H)もこの部分です。
  4. 製品を適合要件に照らして検証・試験実施
    テスト、試験、評価を行い、適合性を裏付ける技術データを整備します。
  5. 技術文書(テクニカル・ファイル)を作成・保管
    設計資料、仕様、試験報告書、部品表、使用説明書など、適合性を証明する文書群を整備し、通常製品最終出荷後10年間(製品によってはそれ以上)保管するケースが多いです。
  6. 宣言(EU適合宣言/Declaration of Conformity)を作成し、CEマークを付す
    製造者(または輸入者等)が、適合性を宣言する文書を発行し、製品にマークを付け、市場に投入します。

製品群:CEマーキングの対象となる製品カテゴリ

元記事でも多数の製品カテゴリが列挙されていました。ここでは最新整理も踏まえて補足します。

主な対象製品群

CEマーキングの対象となる主な分野には以下があります。なお、これらはすべて該当する指令/規則がある製品に限られます。

  • 機械(Machinery)
  • 低電圧設備(Low Voltage Equipment)
  • 電磁両立性(EMC)関係機器
  • 玩具(Toys)
  • 個人用保護具(PPE:Personal Protective Equipment)
  • 圧力機器(Pressure Equipment)
  • 建設製品(Construction Products)
  • 医療機器(Medical Devices)および体外診断用医療機器(IVDs)
  • 無線機器(Radio Equipment)
  • 特定有害物質の使用制限(RoHS)対象機器
  • その他、昇降機、温水ボイラー、ガス燃焼器具、レクリエーション船舶なども対象となる場合あり。
    (元記事の列挙に概ね準拠しています)

最近の追加・注目カテゴリ

  • 建設製品に関しては、Construction Products Regulation (CPR) が改訂され、2025年1月7日付で新たな枠組み(EU 2024/3110 等)が発効しており、建設製品分野での適合性評価・宣言類において変化が出ています。
  • また、電池・バッテリーやソフトウェア・電子健康記録(EHR)システムなど、新たな分野でCEマーキング、またはそれに準じる適合宣言が必要とされるケースが出てきています。例えば、電池については新しいバッテリー規則(Battery Regulation)があり、「バッテリーにCEマーキング必須」といった案内も出ています。

最近の動向・2024〜2025年のアップデート

CEマーキング制度および関連規制について、最新のトレンド・改正点を以下にまとめます。

主な変更点

  1. デジタル・プロダクト・パスポート(DPP)導入
      製品のライフサイクルや環境情報をQRコード等で追える仕組みとして、欧州では「デジタルプロダクトパスポート」の制度化が進んでいます。例えば、2025年以降に順次実施される予定です。
  2. 新一般製品安全規則(General Product Safety Regulation: GPSR)
      従来の指令から改正され、2024年12月14日発効予定の新規制 (EU 2023/988) によって、製造者・輸入者・販売者の義務が強化されます。これに伴い、CEマーキング製品の監視や技術ファイルの保持義務、リスクアセスメント、継続モニタリングの義務が増えます。
  3. UK(英国)におけるCEマークの位置づけ
      英国では、UKCAマークが導入されていますが、多くの製品について「CEマークでも認める」方針がとられています。例えば、「製造者がCEマークを付していれば、英国市場でも継続して認められる」
  4. IVD(体外診断機器)向け規制強化
      In Vitro Diagnostic Regulation (IVDR: EU 2017/746) の移行期限が迫っており、従来のCEマークが付された製品でも、移行期間終了後には新制度下の適合手続きが必要となるケースがあります。
  5. 電池・バッテリー規則(Battery Regulation)
      電池・バッテリー分野では、2024年8月以降、「すべてのバッテリーにCEマーキングが義務」となる案内も出ており、環境・リサイクル・サプライチェーンの透明性が強く求められています。

実務的に押さえておきたいポイント

  • 技術文書(テクニカル・ファイル)は電子化・クラウド管理が進んでおり、紙だけでは不十分とされるケースも出てきています。
  • 輸入時・市場流通後の監視(市場監督:Market Surveillance)強化。2025年以降、「輸入時チェックが厳格化された」「製品群が追加された」といった報告があります。

CEマーキングの特徴(優れている点・留意点)

優れている点

  • 一度適合を証明すれば、EU加盟国間で追加の国家ごとの適合証明が不要となる「単一市場アクセス」のメリットがあります。元記事でも「欧州域のどこでも自由に販売できることを示している」と説明あり。
  • 製造者・輸入者が責任を明確に持つ制度であり、製品安全・環境保護の観点で国際的な信頼性が高まります。
  • 製品をEU以外で製造しても適用可能なので、グローバル展開を図る企業にとって重要な要件となります。

留意すべき点

  • CEマークを貼れば自動的に「安全・高品質」という保証があるわけではありません。誤って適用範囲外の製品に貼られたり、適合性評価を適切に実施しないまま貼られるケースも存在します。
  • 製品ごとに「該当指令/規則」が異なり、それぞれ適合性評価のルートも異なるため、 自社製品がどのカテゴリ・どの手続きに属するか を誤らないことが重要です。
  • 市場監視と違反時のペナルティ対応が各加盟国でなされており、適合しない製品はリコール・市場排除のリスクがあります。

日本(輸出者/製造者)から見た注意点・日本企業が押さえておくべきこと

日本企業にとっての留意点

  • 日本で製造した製品でも、EU市場(あるいはEEA)に「販売または流通を目的とする」場合には、CEマーキング義務のある製品であれば適用対象となります。
  • 製造者が日本にある場合、EU内に 製造者の「責任者(Authorised Representative)」を設置 しなければならないケースもあります。例えば、海外製造者がEU市場に出す際には、EU内に代理人を設けることが義務化されている指令もあります。
  • 英国市場を視野に入れている場合、CEマークだけでなくUKCAマークの要否・使用可能性についても検討すべきです。
  • 最近の動向として、環境・サステナビリティ(例:電池・リサイクル)、デジタル追跡(DPP)などが強化されており、従来の「安全・基本性能」だけではなく「環境負荷・トレーサビリティ」も意識され始めています。日本企業としても早めの準備が望まれます。

実務的なチェックリスト(日本企業向け)

  1. 製品が どの指令/規則に該当するかを確認。
  2. 該当指令の「基本要件」「適合性評価モジュール」を確認。
  3. 必要であればノーティファイドボディ(Notified Body)を選定・契約。
  4. 技術ファイルを準備(設計図、部品表、試験結果、ユーザー説明書等)し、保存義務を理解。
  5. EU適合宣言(Declaration of Conformity)を作成。
  6. CEマークを貼付(または包装/添付文書に表示)し、正しく表示されているか確認(サイズ5 mm以上等)。
  7. 市場監視対応やアフターサービス、クレーム対応の体制を整えておく。
  8. 英国を含めた輸出・流通チャネルがあるなら、UKCAマークやそれに準ずる認証も視野に入れる。
  9. 環境・リサイクル・トレーサビリティ要件(例:電池、DPP)にも備える。
  10. 技術文書・適合宣言が最新法令に準拠しているか、定期的に確認し更新する。

よくある誤解・質問&その答え

質問回答
「CE」マークを付ければどんな製品でも欧州で売れるの?いいえ。CEマークを付けられるのは、該当するEU指令/規則が定める「CEマーキング義務」のある製品に限られます。化粧品、食品、医薬品など多くの製品は別の制度を適用されており、CEマークを付すこと自体が誤りの場合もあります。
CEマーク=品質保証マーク?誤解です。CEマークは「適用される指令・規則に適合しています」という製造者の宣言であり、第三者認証のマークでも、製品が最高品質であるという印でもありません。
ノーティファイドボディが関わらなければCEマークできない?製品のリスク・カテゴリによっては、製造者自身による自己宣言(モジュールA等)でCEマークが可能です。第三者機関(ノーティファイドボディ)が必要かどうかは指令/製品により異なります。元記事でも「リスクが比較的少ない製品では自己認証可能」と説明しています。
CEマークを付けた後、変更したらどうなる?製造者は、設計・仕様・使用目的などに変更があった場合、適合性評価を見直し、技術文書・宣言を更新する義務があります。CEマーク自体に期限はありませんが、宣言が最新の要件を満たしていることが求められます。
英国(UK)市場ではCEマークは使えないの?一部製品では、英国でもCEマークを継続して使用可能とする措置があり、UKCAマークのみが義務というわけではありません。英国市場進出を検討する際には、個別の適用ルートを確認する必要があります。

まとめ

CEマーキングは、欧州市場において製品を流通させる際の非常に重要な制度です。日本を含む製造・輸出企業にとっては、単に「マークを付す」ことだけでなく、適用指令の特定、適合性評価の実施、技術文書の整備、表示ルールの遵守、さらには近年強まる環境・サステナビリティ対応まで含めた 総合的なコンプライアンス体制の構築 が求められます。

また、制度は静的ではなく、2024〜2025年にかけて「デジタルプロダクト・パスポート」「一般製品安全規則改正」「バッテリー・電池規則」などの新潮流が出ています。これらを無視して旧来の手続きを継続すると、欧州市場での流通が滞ったり、想定外のコストやリスクが生じる可能性があります。

欧州市場への製品投入を考えるならば、CEマーキング制度を“ルールのチェック項目”として終わらせず、「戦略的な市場参入マネジメント」の一環として捉えることをお勧めします。


コメント