機械を設計・運用するうえで、ガード(防護柵・覆い等)は非常に基本的かつ重要な安全対策です。EUや国際規格でも、ガードおよび保護装置に関する “特別要求事項”(Special requirements for guards) が定められています。以下では、EHSR 1.4.2(必須健康安全要求事項の一部)を中核に、国内/国際規格・最新動向を交えて解説します。
EHSR 1.4.2:ガードに関する特別要求事項の内容
もともとこの要求事項は、EU 機械指令(Directive 2006/42/EC)付属書 I の「1.4 特性要求(Required Characteristics of Guards and Protective Devices)」に含まれています。
1.4.1 ガードの一般的要求事項(General requirements)
ガード及び防護装置は次を満足しなければならない:
- 堅固な構造であること、
- 取付け位置に確実に固定されること、
- 追加の危険源を増大させないこと、
- 容易に迂回したり、またはその機能を不能にしないこと、
- 危険区域から適切な距離の位置に設けること、
- 製造工程を観察するための視野をできるだけ妨げないこと、および
- 工具の取付けおよび/または取替え、並びに保守作業の際に、可能な場合はガードの取外しまたは防護装置を無効化せず作業を行うための作業部位だけに接近を制限することによって、必要な作業ができること。
その上で可能な場合には、ガードは材料または物品の排出・落下に対して、また、機械類により発生される放射に対して防護しなければならない
主な分類と要件を整理すると以下のとおりです。
1.4.2.1 固定式ガード(Fixed guards)
- 工具を使わなければ開けたり取り外したりできない固定具を用いて保持されること
- その固定具は、ガードを取り外す際にも、ガードまたは機械本体に保持されること
- 可能な場合、固定具なしではガードが所定位置に留まらない設計が望ましい
これにより、作業中の不用意な脱着や、誤って外れてしまうリスクを防ぐ意図があります。
1.4.2.2 インターロック付き可動ガード(Interlocking movable guards)
可動式で操作や作業のため開閉されるガードに対しては、ただ覆うだけでなく、機械の挙動と連動して安全性を確保する設計が求められます。具体的には:
- 開放中も機械に取り付けられていること(可能な限り)
- 意図的な操作でのみ調整・解除可能であること
- 閉じていない間は機械の危険機能を起動できないように制御(=起動禁止)
- 閉じていない場合は停止命令を発する機能と連動
- 操作者が危険区域に到達可能な場合には、ガードを閉じて施錠するまで起動を防止し、危険がなくなるまで保持されること
- 構成要素(センサ・スイッチ等)の不具合が起動を阻止または停止させるよう設計されていること
このように、可動式ガードはガードそのものと制御系が強く連動して安全性を担保する必要があります。
1.4.2.3 接近を制限する調整式ガード(Adjustable guards restricting access)
食材供給、製品取り出し、検査など作業上、可動部に一定の接近が必要な場合には、調整式ガードを使ってアクセス制限を設けます。この調整式ガードにはあらかじめ以下の条件があります:
- 手動または自動で、作業内容に応じて調整可能であること
- 工具を使わず、容易に調整できる設計であること
1.4.2.4 保護装置(Protective devices)に関する特別要求
保護装置とは、光電センサ、安全マット、レーザースキャンなど「機械を止める/制御する装置」を指します。これには以下の要件が課されます:
- 操作者の手が届く範囲にあるときは動作できないこと
- 可動部が稼働中は、人が可動部分に触れられないこと
- 装置の欠如や構成要素の不具合が、可動部の起動を防止または停止させるように設計されていること
- 意図的な操作のみで調整できる設計であること
MSDコンサルティング
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