CEマーキングはEU市場に製品を投入するための必須条件ですが、その中でも「自己認証(self-certification)」は多くの製造業者が直面する重要な課題です。自己認証は製造者自身が適合性を確認する制度であり、認証機関に依存しない点でコストや手続きの面で大きな利点があります。実際にEU市場で流通する製品の8割以上は自己認証によってCEマーキングが行われているといわれています。
しかし、自己認証には技術的な難しさや判断の難所が存在します。本記事では、特に重要な2つの難点と、その対応策について解説します。
自己認証で難しい2つのポイント
1. 該当する指令を見つけ出すこと
EUでは、製品の種類や用途ごとに20以上の指令・規則が存在します。代表例を挙げると:
- 機械指令(2006/42/EC):産業機械、工具など
- 低電圧指令(2014/35/EU):電気製品(50〜1000V AC, 75〜1500V DC)
- EMC指令(2014/30/EU):電磁両立性に関する製品
- RoHS指令(2011/65/EU):有害物質制限に関する製品
- 玩具指令、医療機器規則、圧力機器指令など特殊分野の規制
製造者は製品仕様、用途、販売対象市場をもとに、どの指令が適用されるかを正しく判断する必要があります。場合によっては複数の指令が同時に適用されることもあり、初めて取り組む際には特に難しい作業となります。
👉 例:産業用ロボットをEUに出荷する場合
- 機械指令(機械の安全性)
- EMC指令(電磁両立性)
- 低電圧指令(電気安全性)
の3つが同時に適用される可能性があります。
2. 認証機関(ノーティファイドボディ)の要否を判断すること
CEマーキングのもう一つの難所は、認証機関の関与が必要かどうかを見極めることです。
- 自己認証で可能な場合
→ 多くの製品は整合規格を用いた自己認証でCEマークを表示できます。たとえば、一般的な産業機械や低リスクの製品は自己認証で十分です。 - 認証機関が必要な場合
→ 高リスクの製品(例:爆発の危険を伴うATEX機器、医療機器の一部、リフト、特定の圧力機器など)は、ノーティファイドボディによる適合性評価が義務付けられています。
判断を誤ると、EU市場で販売停止措置や罰則のリスクがあります。そのため、迷った場合は必ず専門家や認証機関に確認することが安全です。
CEマーキング取得の基本的な流れ(6ステップ)
自己認証かどうかを判断する前に、製造者が必ず実施すべき手順を整理します。
- 該当する指令と整合規格を特定する
- 製品固有の必須要求事項(EHSRなど)を確認する
- 認証機関の関与が必要かどうかを判断する
- 試験や評価を実施し、整合規格に適合させる
- 技術文書(テクニカルファイル)を作成し、10年間保管する
- EU適合宣言(DoC)を発行し、CEマークを表示する
この流れの中で、特に1.と3.が「難しい部分」に該当します。
自己認証を進めるうえでの実務的な支援先
- 中小企業基盤整備機構(SMRJ)
→ 中小企業向けの海外展開支援、CEマーキング相談窓口あり - 公設試験研究機関・工業技術センター
→ EMC試験、電気安全試験などを実施可能 - 第三者機関(ノーティファイドボディ)
→ 必要に応じて適合性評価を依頼 - 専門コンサルタント
→ 指令選定、整合規格の解釈、技術文書のレビューなどをサポート
少額の費用はかかるものの、初期段階で誤った判断を避けることができ、後の市場リスクやリコール対応による巨額の損失を防ぐことにつながります。
まとめ
- 自己認証は、製造者自身が適合性を確認しCEマークを表示する仕組み。
- 多くの製品で自己認証は可能だが、指令の特定と認証機関の要否判断が最も難しい。
- 判断に迷った場合は、SMRJ、公設試験研究機関、認証機関、専門コンサルタントの支援を活用するのが現実的。
- 自分で対応できる部分は進めつつ、重要な判断は専門家に委ねることが「正しい専門家の使い方」。
👉 これにより、CEマーキング取得の効率化と法令遵守を両立できる。
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