職場の安全衛生体制を構築するうえで重要なのが、「ライン型」「スタッフ型」「ライン・スタッフ型」 の3つの安全管理体制です。
安全管理体制とは?
安全管理体制とは、事業者が安全方針を策定し、安全目標を設定し、計画的に労働災害防止活動を推進するための組織的な仕組みです。
作成された「安全方針」「安全目標」「管理計画書」は、すべての労働者に周知しなければなりません。
この安全活動を実行するための職場体制の形態が、以下の3つです:
- ライン型(Line Type)
- スタッフ型(Staff Type)
- ライン・スタッフ型(Line & Staff Type)
ライン型(ライン型安全管理者)
概要
ライン型とは、生産ラインの管理者が安全管理も兼任する体制です。
生産の指揮命令系統(ライン)の中で、計画・実施・点検・改善(PDCA)を一貫して行います。
小規模事業場で採用されることが多く、専任の安全課を設けないのが特徴です。

長所
- 小規模事業場でも容易に導入可能
- 生産管理者が安全管理を兼ねるため、指示や対応が迅速
- 実務的で現場の実態を反映しやすい
短所
- 管理者が日常業務で多忙なため、安全知識の習得が不十分になりがち
- 安全指導能力に個人差が出やすい
- 生産優先の意識が強く、危険の見逃しが発生する場合がある
スタッフ型(スタッフ型安全管理者)
概要
スタッフ型とは、安全衛生専門のスタッフ部門(例:安全課)を設ける体制です。
この部門が安全方針の立案・調査・検討・勧告を行い、生産ラインが実行を担います。
中〜大規模事業所で採用されることが多く、安全専門職による統括的管理が特徴です。

長所
- 最新の安全情報・法令改正への対応が早い
- 経営トップの方針を現場へ体系的に反映できる
- 安全活動を計画的・継続的に推進できる
短所
- 現場から距離があり、実態を把握しにくい
- 生産ライン管理者との連携不足・反発が起こることもある
- トップの理解がないと、現場に安全対策が浸透しない
ライン・スタッフ型(ライン・スタッフ型安全管理者)
概要
ライン・スタッフ型は、ライン型とスタッフ型を組み合わせた理想的な体制です。
スタッフ部門が安全方針・計画を企画・立案し、ライン部門が現場で実施します。
現場にも安全担当者を配置し、双方が連携してPDCAを回す仕組みです。

長所
- ライン型とスタッフ型の短所を補完できる
- 専門性と現場実行力の両立が可能
- 安全文化の定着に最も効果的
短所
- 両体制を維持するため、大規模事業場でないと構築が難しい
- 組織運営コストが高く、調整が複雑
試験に出る!労働安全コンサルタント試験の例題と解説
以下は、実際に試験でよく問われる「正誤問題」の例です。
問1
最も効果的な安全管理を推進するためには、ラインとスタッフがそれぞれ独立して責任を持ち、個別にPDCAを回すことが重要である。
誤り:ラインとスタッフは協力して安全管理を行う必要があります。独立ではなく連携が基本です。
問2
ライン型安全管理は、スタッフ型に比べて指示や改善策が徹底されにくい。
誤り:ライン型は、生産管理者が安全を兼任しており、指示や措置を徹底しやすいのが特徴です。
問3
スタッフ型は、新しい安全情報を収集しやすく、指示や措置を徹底して実施しやすい。
誤り:情報収集しやすい点は正しいが、現場への指導徹底は難しいことがあります。
問4
スタッフ型は、生産と遊離することが少なく、生産技術の進歩に即応した対策が取りやすい。
誤り:スタッフ型は現場の実態を把握しにくく、安全活動が生産と遊離することがあります。
まとめ:事業規模に応じた最適な安全管理体制を選択しよう
体制 | 特徴 | 向いている事業場 |
---|---|---|
ライン型 | 生産管理者が安全を兼任。小規模向け | 小規模事業所 |
スタッフ型 | 専門部署による統括管理。情報力が強い | 中〜大規模事業所 |
ライン・スタッフ型 | 専門性と現場実行力を両立 | 大規模事業所 |
安全管理体制は、事業場の規模やリスクの大きさに応じて最適化することが重要です。
どの体制でも、経営トップから現場まで一体となった安全文化の醸成が、労働災害ゼロへの第一歩となります。
MSDコンサルティング
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