相手に伝わる資料を作る技術——まず「主題」を明確にしよう

つぶやき

資料作成の最初の一手は、主題(テーマ)を明確にすることです。結論を冒頭に示すことで、読む側は「この資料を読む価値があるか」を瞬時に判断できます。特にオンラインでは、ユーザーの多くがページをスキャンするだけで、平均的にはテキストの20〜28%しか読まれないという調査結果があります(Nielsen Norman Group, 2020)。つまり、冒頭で主題を示さなければ、せっかく作った資料も読まれない可能性が高いのです。


主題(テーマ)を確認することの重要性

資料の主題は、作り手の「言いたいこと」ではなく、受け手の関心や組織の課題に基づいて設定する必要があります。時間はビジネスにおける最も限られた資源です。受け手が興味を持たない資料は、いくら詳細であっても無駄になりかねません。

主題を決める際には、以下のチェックリストが役立ちます:

  • 誰が受け手か?(意思決定者/実行者)
  • 受け手が抱える課題は何か?(一文で整理)
  • この資料で期待するアクションは何か?(決裁・承認・情報共有など)
  • 成否はどのように測るか?(KPIや数値指標で明示)

こうした視点で主題を設定することで、資料の説得力と実務的価値が格段に高まります。


主題を最後まで押さえ続ける

資料作成中に最も陥りやすい失敗は、途中で主題が曖昧になることです。たとえば会議中に話が脱線して、もとのテーマに戻らないまま終了してしまうことはよくあります。資料作成も同じで、主題がぶれると、結論が見えない、まとまりのない資料になってしまいます。

主題を最後まで意識するための方法:

  1. 最初に「主題と目的」を1文で書く
  2. 目次や見出しを作り、各章で主題に沿った内容だけを記述する
  3. 資料の最後に「主題の再提示」と「期待するアクション」を示す

この手順を踏むだけでも、資料の明確さと説得力は大きく向上します。


イシューからはじめる

ビジネス資料作成のプロセスでよく用いられるのが、「イシュー(issue)」の特定です。MBAグロービス経営大学院によると、イシューとは「論理を構造化する際に、何を考え、論じるべきか」を示す概念です(グロービス, 2025)。
つまり、イシューを特定することで、資料作成の目的や受け手の関心に沿った議論が可能になります。無駄な分析や情報収集を避けることができ、資料の効率と質を高められます。


主題(テーマ)を相手と共有する

主題が決まったら、それをチームや受け手と共有することが重要です。共有されなければ、資料はただの情報の集まりに過ぎず、人を動かす力を持ちません。

論理を構造化する際に、その場で「何を考え、論じるべきか」を指す。 「イシューを特定する」とは、「何を考えるべきか」「受け手の関心は何か」を熟考し「考え、論じる目的」を押さえることを指す。
(MBAグロービス経営大学院)

具体的な方法の例:

  • 1枚サマリー
    • タイトル(主題を一行で)
    • 目的(何を決めたいか)
    • 結論(推奨アクション)
    • 主な根拠(箇条書き3点)
    • 次のアクション(誰がいつ何をするか)
  • 会議アジェンダ
    • 目的(1文で)
    • 主題(決定すべき論点)
    • 論点別所要時間・担当者
    • 期待する決定(Yes/No/次回検討事項)

こうしたテンプレを用いれば、主題が常に共有され、資料作成や意思決定の効率が飛躍的に向上します(Harvard Business Review, 2021)。


事例:JFKの月面着陸演説

主題共有の重要性を示す歴史的事例として、1961年5月25日のジョン・F・ケネディ大統領の議会演説が挙げられます。ケネディは「今後10年以内に人間を月に着陸させ、安全に地球に帰還させる」という明確な主題を掲げました。この明確さが国民の行動を一致させ、史上初の有人月面着陸へとつながったのです。


まとめ:主題を最後まで押さえる3つの習慣

  1. 冒頭で結論を示す
  2. チェックリストで主題に沿った内容を確認
  3. 資料・会議で主題を共有し、脱線を防ぐ

主題を意識して資料を作るだけで、受け手の理解と行動を促す力が格段に高まります。日常の資料作成でも、ぜひこの手順を実践してみてください。


MSDコンサルティング

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